最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)458号 判決 1968年9月20日
上告人
T・S
代理人
渕上義一
被上告人
T・Y
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人渕上義一の上告理由第一について。
所論指摘の事実関係に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして、これを肯認することができる。そして、原審が確定した事実関係のもとにおいては、上告人と被上告人との婚姻関係が破綻に陥り、右破綻を生ずに至つた主たる責任が上告人に存するものとして、被上告人の離婚請求を認容し、上告人の同請求を棄却した原審の判断は、正当である。原判決には、所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、原審の認定しない事実を前提とし、または原判決を正解しないで、これを攻撃するものであつて、採用することができない。なお、論旨引用の最高裁判決は本件に適切でない。
同第二について。
およそ、民法七六〇条の規定による婚姻費用の分担額は、夫婦の協議により、もし協議が調わないときは、家事審判法の定めるところに従い家庭裁判所が夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して決定すべきであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するを相当とする。原審の確定した事実によれば、上告人と被上告人との間には、所論指摘の生活費支払の約定がなく、また婚姻費用分担に関する審判もされていないというのであるから、被上告人の本件生活費の支払義務は具体的に確定していないものというべきである。したがつて、右と同旨の見解のもとに上告人の生活費支払請求を排斥した原審の判断は正当と認められる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原判決を正解せずしてこれを非難するものであるか、原判決の結論に影響ない傍論を攻撃するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)